ここのところ、以前にも増して老人施設の相談が増えています。
特に増えたのが、スプリンクラーの設置についてです。
長崎市で起きたグループホームの火災がきっかけになり、あらゆる老人ホームのスプリンクラー設置が義務付けられたことが要因です。
以前は、延床面積が275㎡未満の老人施設はスプリンクラー義務設置の対象から外れていました。
しかし今回の事故がきっかけで、規模の大小に関係なく設置せよという指導が始まりました。
そうは言っても、他の消防設備と違うのは費用負担が非常に大きいこと。
規模によっては、簡単に1000万を超えてしまいます。
急に決まったから、はい1000万用意しろと言われても、普通はできるはずがありませんよね。
それでも役所の人間は、規則順守が基本なので他人の懐事情など考えてはくれません。
いくら無理だと主張しても“お金のことはこちらには関係ありませんので、そちらで何とかしてください。”と言われるだけです。
ちなみに、現在設置していない対象物の未設置の理由には、“費用負担の問題”が67.6%を占めています。
残念ながらこればかりは決まってしまったことなので、施設に関係する責任者の方は諦めて何とかするしかありません。
では、こんな大金をすべて自己の責任において調達しなければならないのかというと、それもそうではありません。
かかる費用の半分程度は、国から補助金が出ますので多少は負担が少なくなります。
ただし、これはきちんと国に届出をしている施設のみが対象になりますので、注意してください。
それでもかかる費用は高額であり、絶対に失敗はしたくありませんよね。
じゃあ何を基準に施工業者を選択したら良いのでしょうか。
工事を請負う際、注文金額が500万以上になった場合には、建設業許可書(消防施設工事業)というものが必要になります。
この許可書の取得には、過去10年間の請負実績とそれに伴う責任者(雇用管理責任者、消防設備士など)の在籍が必要です。
また業績や債務状況なども審査されます。
条件を満たしている証明をするための資料を、かなり細かく求められるので取得するのは大変です。
ですが、500万に満たない注文には取得する必要はないので、通常の請負範囲であれば無理に取得しなくてもても問題ありません。
ところが今回のケースの場合はどう見ても500万以下になることは考えられません。
つまり、この許可書はなければならない訳です。
それを知らぬ顔をして、請負ってしまう業者が多いのです。
これは、言い方を変えればどのような業者なのかわからないということ。
取りたくても取れない理由があるのかもしれません。
消防設備士がいないとか、業績が思わしくないとか。
これだけの大きな金額の請負工事を、何らかの理由で許可書を持たないことが発覚し、途中で投げ出されてしまったら・・・・・・。
考えたくないですね。
逆を言えば、取得している業者にはそれだけの責任があるということなのです。
このような理由から、建設業許可書の有無は業者選択の条件になると言えましょう。
実際、多くの大手企業は取引条件にこれを挙げていますから。
やはり、金額の大小にかかわらず、依頼は安心できるところに発注したいですね。