ビルやマンションの大規模修繕が多いこの時期に、よくある間違った相談をご紹介します。
バルコニーに設置されている避難ハッチは、あまり意識されていないことが多いため、さまざまなトラブルにつながることがあります。
今回のケースは、物干し竿をかけた際避難ハッチまではみ出し梯子を降下させることができないという場合です。
それを、物干しの金物をいじらず、避難ハッチの改修によって改善せよと要請してしてくるのです。
おまけに、それを遂行できないのは施工業者の責任として、その責務をすべてなすりつけてきます。
避難ハッチの近くに物干しの金物が取り付けてあった場合、竿をかけると梯子が竿に引っかかって降下しなくなることがあります。
我々施工を請け負う業者は、避難ハッチの改修を行う際避難ハッチの降下空間(ハッチ内の梯子を降下させる際、必要になる空間のこと)には障害物がないものと想定し、改修を請け負います。
なぜなら、そこに障害物があるかないかを確認するのは、定期点検を行う点検業者の管轄であるからです。
その業者の自主性を尊重しての判断な訳です。
定期点検を行う業者は、法律に従った維持が成されているかどうかの確認業務を、施主や管理会社より請け負っています。
本来であれば、降下空間に障害物があった場合はすべて不適となるのですが、そこは民間の話で仕事欲しさに見て見ぬふりをする業者が多く存在します。
つまり、適しているか否かの報告はこの業者の判断に委ねられているのです。
不適という報告をすれば当然それを是正しなければならなくなり、そこには費用が発生します。
ですから、すべてを〇Xで判断する融通のきかない業者を依頼者側は嫌います。
まあ、世の中はそんなもんですから、ある程度は仕方ないのかもしれませんね。
しかし、そのことを良しとした責任は、それを認めた関係者にあることを忘れてはなりません。
にもかかわらず、改修を請け負う業者に責任を負わせようとするのはいかがなものでしょうか。
現在使用されている避難ハッチの内蔵梯子は、約80~90%程度がパンタグラフ式構造で、残りはスライド式構造とその他です。
このパンタグラフ式構造は、梯子が完全に伸びきった時に初めて強度と必要な空間が確保されます。
その為、途中に障害物があった場合は降下しなくなり、正常に使用できなくなります。
一方、スライド式構造はスライド式なので、問題となる竿の間をすり抜け降下させることが可能です。
しかし残念ながら、スライド式はコストがかかるため、当然販売価格は高くなります。
そのような理由で、一般的にはあまり浸透しませんでした。
ところが、その部分をメリットのように説明して関係者に働きかけ、注文を受けようとする会社があるのです。
確かに、梯子そのものを降下させられるかどうかを問われた場合、スライド式であれば竿の間からすり抜けさせて降下させることが可能です。
しかしこれは、ただ梯子が降りているだけであり、竿はそのまま邪魔をしていて人が通ることはできません。
それでは、避難器具としての役割を果たしていることにはならないのです。
それでも、降りながら竿をどければ支障ないと言っているようですが、消防法ではその空間に障害物があるかどうかが問題になるわけで、正しくは物干しの金物自体をそうならぬよう移設しなければなりません。
それを、製品価格が高いため売りにくい製品を売るためにごまかし、言いくるめて販売しようとています。
それに元請けがのってしまった結果、このようなことが起きてしまったのでしょうね。
その他にも、外部には洩らせない内部事情もあるのかもしれませんが。
このように消防関係のことは、もっともらしいことであっても、視点を変えてよく考えると間違っていることがたくさん存在しますので、依頼する際には慎重に判断してください。